局力が欲しい

友人たちとショッピングモールを歩いていた時、一人が荷物を紛失した。

案内所には人形のように可憐な女性が座っていて、遺失物センターに問い合わせをしてくれた。その間、私たちの目は彼女の完璧なメイクに釘付けだった。

忘れ物はすぐに見つかった。しかし受け取りの手続きは煩雑で、案内嬢のちょっとした手違いのため、さらに面倒になった。

帰り道、私と友人たちはふざけて「お局様トーク」を始めたのだが、「睫毛盛ってる暇があったら○○してくれないかしら」みたいなベタなフレーズしか出てこなくて、ちょっと愕然とした。

 

いい年こいて、我々には「局力(つぼねりょく)」が全くない。

 

以前書いた「びじゅチューン」に「お局のモナリザさん」という歌がある。

人気作家・柚木麻子の小説を映像化した「ランチのアッコちゃん」というドラマも、最近まで放映されていた。

どちらにも、戯画化された「お局様」が出てくる。共通するのは、仕事ができ、社内を熟知していて、後輩に厳しい(そして実は優しい)こと。冴えわたる厭味、謎に満ちたアルカイック・スマイル。

 

女同士の友人関係において、昔から私は面倒を見られる側だった。

そんな私と長年付き合っているくらいだから、友人たちは後輩に厳しそうでは全然ない。おそらく、優しい先輩だと思う。 

私はわりとずけずけ言う方だが、あまり周りが見えていないし、謎めいてもいない。ボケかツッコミかで言えばボケだ。後輩が育ったとしても、先輩のおかげですなどとは毛ほども思われてない、そういうタイプだ。

 

チームで働くのに必要な人材とは何だろう。

信頼され、決断力のあるリーダー。実務をまとめるサブリーダー。そして、ドラマでは大抵「お局様」がいる。

サブリーダーを兼ねていることもあるが、お局はただのサブリーダーではない。批判ができ、状況によっては嫌われ役も引き受け、しかし愛情を持ってチームを支えることができる。

人は人に好かれたいものだ。嫌われることを厭わない、というのはすごく精神力のいることだ(もちろんただ単に嫌われるのではなく、『チームのためを思ってあえて嫌われる』という場合に限るが)。

困るのは、精神力が育っていないのに、年齢と立場だけどんどんお局ポジションに近づいていることだ。無邪気キャラでいるのは、年齢的にも、仕事上の経験値から言ってもアウトな気がする。しかし局力がないままお局的な言動をしても、それはただのイヤな女だ。

 

女の子からお局になる段階で、母親と言う立場を経験していれば違ったのかもしれない。母親は、子どもから嫌われないという自信のもとに、時に嫌われ役をすることもあるだろう。絶好の局実習だ。

独身女性が多いことを考慮して、ある程度の年齢に達したら、研修をしてくれないものだろうか。局の。

しかし、されたらされたでセクハラだと騒ぐのが我々だ。もうちょっと個々の自覚に訴える感じで、女性誌で「局特集」とかやってくれないか。「愛される局になる!」とか。愛されちゃだめか。

いっそのこと『TSUBONE』とか創刊してくれたら、私は買うぞ。「この一言がオフィスを変える!絶妙な厭味とそのフォロー」特集とか、「クール系局VSお母さん系局・一週間着回しコーディネイト」企画とか、食い入るように読むぞ。創刊号の付録は、ロッテンマイヤーさんの眼鏡がいい。

局という言葉が悪いのかもしれない。男性しかいない職場でも、女性でいうお局にあたるポジションの人が要るはずだ。

TSUBONEに代わる、親しみやすい名称を次の会議までに各自考えてくるように。下半期の査定に響くので、そのつもりで。

 

 


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