YOUは何しにギロッポンへ

六本木という街には、働くようになって初めて出入りするようになった。

アメリカ人の同僚に連れられて、T.G.I.FRIDAYに行ったのが最初だった、と思う。

以来、赤坂、六本木界隈は、何かにつけて「初めての体験」をする場所になった。体験型レストランに行ったのも「NINJA」が初めてだったし、初めてマーティン・フリーマンを見たのも、「観客が歌う映画」を観たのも六本木ヒルズだ。お金持ちが多そうな雰囲気に気後れして、「何かないと行かない」というのが正直なところかもしれない。

そんな気後れの街・赤坂や六本木で、唯一リピーターになったパブがある。リピーターと言っても群馬に住んでいるので両手の指に足りない回数だが、なんとなく落ち着ける場所で料理もおいしいので、遠方に住む友人たちとの集合場所のようになっている。がやがやしている上に周りの会話が英語なので、日本語である程度気兼ねなく萌え話ができるのもいい。

先日も利用した。Rさん、Lさんと私の3名で入店しようとすると、店員さんが「イベントをやっているが、構わなければ」と申し訳なさそうに告げた。

真冬で、外は雨降りで、お腹は空ききっていた。それに気を遣われないことこそが私たちにとっての利点なので、全くもってノープロブレムである。構わん構わん、と意志表示すると、店の真ん中にあるテーブルに通してくれた。

食事より、酒や調味料を置くのが目的という感じの、丈が高く天板が二段になっている、小さな丸テーブルだ。着席すると、向かいに座るRさんの顔が、一段目と二段目の間に顔を差し入れて覗かない限り見えない。座ってくつろぐよりも、伊達男が肘をかけてもたれかかっていたり、吹っとばされた男になぎ倒されて、周りの客が悲鳴を上げるような場面が似合いそう。

しかしまあ、なんとか食事はできる。使用面積は小さくても、二段あるからお皿は倍乗るし。気にしないことにして飲み物を注文していると、けたたましくホイッスルが鳴った。

客の全員、いや半分が、さっと席を立つ。立ったのはいずれも男性、残ったのは女性だ。よく見ると、私たち以外の全員が名札をつけている。

我々3人の丸テーブルを世界の中心として、時計回りに男たちの大移動が始まる。さっき申し訳なさそうだった店員が声を張り上げ、「次のホイッスルは15分後」と告げる。

 

初めてだが間違いない。これ、お見合いパーティーだ。外国人の。

おそらく外にもお知らせがあったろうに、ちゃんと見ずに入店したこちらが圧倒的に悪い。悪いのはわかってるが、言わせて欲しい。

 

断れよ!

 

かくして、15分おきにホイッスルが鳴り響く中、私たちは飲み食いを堪能し、人にうるさがられる心配全くなしに(周り皆それどころじゃない)、マッツ・ミケルセンやリチャード・アーミティッジへの愛を伸び伸びと語りあったのだった。

時々名札を付けた男性が陽気に飛び込んできては、全ての椅子が(若干お姉さん気味の)女性で占められてることに戸惑いを隠さなかったり、隣のテーブルのエリカ(仮)をボブ(仮)が席を離れた後も狙ってるのにエリカ(仮)はユージーン(仮)に惹かれてるのが丸わかりでこっちがハラハラさせられたりしたが、それもまた良い思い出である。

他人の恋愛模様の情報が一方的にインプットされ過ぎて、アウトプットするべく近くのコーヒーショップで自主反省会を行わずにはいられなかったが……。


そんなこんなで、就職したての頃から今に至るまで、六本木は新しい何かが起こる街であり、未体験のことだってまだまだあるのだ。

とりあえず「いい年してふらふらしてないで、婚活しろよ」攻撃に対し「お見合いパーティーに参加したことならあるんですけどね~」とにっこり笑う、という迎撃パターンがひとつ増えた。めでたし。

 


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